投げた本人にもどこにいくか分からない!?魔球を操るナックルボーラー
- 2014/8/28
- メジャーリーグ
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魔球を操る魔術師
ナックルボールは、ほぼ無回転で空気の抵抗を大きく受け、左右へ揺れるように不規則に変化しながら落下します。まるでめまいを起こしたかのような錯覚を感じさせるほど、ボールは不規則に大きく揺れます。ナックルボールの描く軌道は打者はおろか受ける捕手や投手本人にすら予想できず、ナックルボールが来ると分かっていても簡単には打てないため、魔球と呼ばれます。その魔球ナックルボールだけを投げ続けるのが魔術師ナックルボーラーです。
離れて見るとわかりづらい
しかもその変化は打者や捕手、審判など、軌道が分かる位置にいないと分かりにくく、球速も遅い(100-110km/h前後)ため、スタンドの観客にとってはただのスローボールのよう見えます。そのため野球に詳しくない人が見ると、「あんな遅い球も打てないのか」と思われやすく、打者に精神的なダメージを与えることも。しかし不規則な変化のために緻密なコントロールは不可能で、相手の欠点をつく配球は難しいので、打者との駆け引きよりもナックルの投球に集中しなくてはなりません。そして風の影響を受けやすく天候によって投球内容に大きく差が出てしまいます。
ウェイフィールド投手のナックルボール。まさに無回転。
実は絶滅寸前
メジャーリーグでは多くのナックルボーラーが活躍してきました。フィル・ニークロ投手(通算318勝)とその弟のジョー・ニークロ投手(通算221勝)が兄弟でナックルボーラーでした。また、ホイト・ウィルヘルム投手とジェシー・ヘインズ投手は殿堂入りし、ティム・ウェイクフィールド投手はボストンレッドソックスなどで長く先発ローテーションを務め、通算200勝を挙げた。2012年にはR・A・ディッキー投手がシーズン20勝。しかしナックルボーラー自体は年々減少し、現役メジャーリーガーはディッキー投手しかいません。
苦労の末、ナックルボーラーに
200勝のウェイクフィールド投手は遅咲きの苦労人。プロ入り当初は一塁手でしたがピッチャーに転向。パイレーツをクビになり、レッドソックスに。基本は先発でしたが、ナックルは肩に負担がかかりにくいということでチームの台所事情が苦しいときにはロングリリーフでも使われる便利屋扱いでした。高い貢献度の割にはインパクトが弱く、200勝を挙げていながらオールスター出場は2009年42才の時の1回だけです。P.マルティネスやC.シリングら、共にボストン黄金期を築いた豪腕達が脚光を浴びる中、彼は静かに淡々とナックルを投げ続けました。
新次元のナックルボーラー
ディッキー投手も元々は普通の投球スタイルでしたが、不振の中、結果を求めナックルを習得しました。それでもすぐに結果が出ず、いくつもの球団でクビ、マイナー落ち、トレードなどを経験しました。最後に行き着いたメッツで2010年、2011年共に先発として定投球イニングをクリアし、2012年はサイヤング賞を受賞しました。37歳になって開花したと言えますが、ナックルボーラーは普通のピッチャーに比べ加齢による衰えが少ないのも特徴です。さらにディッキー投手のナックルボールは速く、どこにボールが行くのか分からないほどコントロールの難しいナックルを巧みに操るほどコントロールがいいのです。そしてナックルボーラーは盗塁を狙われやすいのですが、ディッキー投手はほとんど盗塁を許しません。過去のナックルボーラーとは違う進化型のナックルボーラーなのです。
『高速ナックル』でガンガン三振を取っていくディッキー投手
スライダーやフォークボールなどのキレのある変化球と比べるとナックルボールは大きな瞬発的なパワーを必要としないので、技術を磨き続ける職人のような円熟した投手として今後も活躍を期待しています!
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