競技人口減で野球の未来が危ない?!あなたにも知ってほしい野球界の取り組み 

  • 2017/10/13
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JFAが舵をとるサッカー界の取り組みは遥かに先行

さて、少年の競技人口が横ばいと健闘しているサッカーであるが、JFA(日本サッカー協会)がサッカー振興のための幼児期からの政策に取り組み始めたのは2002年と早い。現在、JFAの未就学児向けサッカー振興は以下の3本柱。

①保育園・幼稚園への巡回指導

 サッカーを知らない子供達へのサッカーの魅力の伝達

②キッズフェスティバル

 能動的に参加してもらうことによって、さらに魅力を伝達

③公認キッズリーダー 講習会

 子どもたちの身の回りに、サッカーの楽しさを伝えられる大人を増やす

キッズフェスティバル

②キッズフェスティバルの様子(JFA提供)

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また、③で養成した公認キッズリーダーには、①②の施策への協力も呼びかけ、相乗的に効果が上がるような狙いもある。

2016年には、14,278回の巡回教室・310回のキッズフェルティバルが開催され、5,655人が公認キッズリーダーの講習会を受けたという。

活動を統括するJFAキッズプロジェクトリーダーの皆川氏曰く「JFA傘下の各都道府県のFA(サッカー協会)に方針を任せている部分も多い。地域密着型でJリーグのクラブや地元のサッカークラブなど様々な人の協力を得て成り立っている活動です」というように、まさに、一枚岩で全国規模での活動である。また、2017年から、キッズリーダー養成にTOYOTAを巻き込むなど、企業との連携も始めている。

サッカーと野球の競技団体はそもそもの成り立ちからして組織形態が異なる。野球は、リーグを作るにあたってチームが主導する形で徐々に数を増やしながら集まり、チームの親会社の意向に強く影響を受けながら意思決定をしてきた。そうした背景から、NPB(日本プロ野球機構)では、リーグコミッショナーよりも、それぞれの各球団の力の方が強く、統率が取り難い。一方でサッカーは、まずプロリーグとしての構想が先にあり、リーグ側がチーム数を先に決めてしまい、求められた要件を満たすチームのみが参画を認められた。今も、JFA(日本サッカー協会)が上部団体として存在し、意思決定がトップダウンで機能している。そうしてプロ設立当初から環境を組織的に創ってきたサッカーと個々のチーム主導の野球とではそれぞれ比較されることが多いが、互いに学ぶべきことも多い。

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競技内にとどまらない社会課題

さて、読者の皆さんは、子どもの運動能力低下のニュースを耳にしたこともあるのではないだろうか。文部科学省の調査によると、昭和60年頃以降15年以上に渡り、子どもの体力・運動能力は低下の一途を辿っているという。そして、その運動能力は二極化してきているのだという。

チームスポーツは、他競技者とのコミュニケーションスキルで競技結果が大きな影響を受ける特性があり、個人スポーツに苦手意識を持つ子でも継続しやすい性質を持つ。その点で、チームスポーツを楽しめる要素を揃えることで草の根で競技人口を増やしやすい環境を用意することが、この運動能力低下・二極化問題の解決の一端となる可能性を持つ。

取材の中で、各担当者が口を揃えたように発したのは「野球だけでなく、サッカーだけでなく、スポーツ自体を」楽しめる環境を創ってゆく必要があるということだった。この「競技を超えて」という発想は、どれほどの問題解決の糸口に成り得るのだろうか。

実際、子どもが、生涯を通じてスポーツを楽しむための素養をつけるためには、なるべく多くのスポーツに親しむことが重要である。また、1つの競技に専念し、それを究める場合においても、成長期においては複数のスポーツを経験することが、極めて重要であると言われる。

そのような環境を創るためにも、また、全世代でのスポーツ実施率を上げるためにも、1995年より文部科学省が実施しているスポーツ振興施策が、「総合型地域スポーツクラブ」である。これまでの主には学校の「部活」という形で単一種目・単一年代でチームが構成される閉じたシステムではなく、すべての世代の人が、身近な場所で総合的に様々なスポーツを楽しむことができるシステムを創ろうという試みである。地域に開かれた誰もが楽しめる「文化」としてのスポーツを目指すものである。学校へ依存していたスポーツを地域に開かれたものにし、より身近な存在にすることで、多くの人のスポーツ参加を促す。運動施設の問題など課題もまだまだ多いが、2016年7月時点で、全国1,741市町村中1,407の市区町村に総合型地域スポーツクラブが創設されている。

また、民間の子ども向けのスポーツクラブで季節ごとに異なる種目を指導する「シーズン制」を導入するクラブも存在する。

こういった試みが継続されうまく効果を上げていき、小さい頃から様々な競技に触れ、豊かなスポーツ観を養うことができたなら、スポーツの実施率が上がり、各競技の人口も増えていくのではないだろうか。スポーツの環境づくりという社会課題を解決するための活動が活発になり、成功例が増えることを願いつつ、今後もその取り組みを追っていきたい。

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