硬式クラブチーム『横浜中央クラブ』の挑戦 〜崩壊寸前から立ち直ったチーム〜
- 2017/5/18
- アマチュア野球
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高校生から社会人までが共に切磋琢磨するチーム
横浜中央クラブ。通称「中央」。横浜市旭区をベースにする硬式クラブチーム。選手は首都圏各地から集まる。
筆者が練習を取材したその夜、練習場では選手の声が響いていた。キャッチボールひとつとってもいくつものバリエーションを行い、一挙一投足から選手のやる気が感じられる。高校生から社会人まで、幅広い年代の選手がお互いに声を掛け合い練習する様子は、まさに「チーム一丸」という言葉がぴったりだ。
しかし、一丸となるまでには実に13年の年月が積み重ねられていた。横浜中央クラブの歩みは、成長の歴史でもある。
「チームとしても個人としてもワガママだった」
2009年、横浜中央クラブは潰れかけていた。強豪チームとして、鳴り物入りで立ち上がった発足当初、集まっていたのは、元プロや元甲子園球児、それこそ強い『個』の集団だった。
「アメリカの独立チームとの練習試合にもまったく臆さずに臨めるくらい、大胆不敵な連中でした」
と語ってくれたのは、創設まもない頃からチームを率いる荒井監督。
「でも、チームとしても、個人も、わがままだったんですよね。それでバラバラになりかけました」
荒井監督が仲間と立ち上げ、5年間かけて育ててきたチームはもはや崩壊の一歩手前まできていた。
そこに現在広報も務める横田氏が入った。高校の先輩に声をかけられ「もう投げられないっすよー」と冗談を言いつつ引き受け、小学生時に試合で覚えたスコアを書いているうちに、マネジャーとして運営にも関わるようになる。中心メンバーで一緒にチームの立て直しを図り、Webサイトを強化したり、選手獲得のために、高校生の受け入れを行ったりと、次々に新しい試みも実行していった。
東海大相模高校が甲子園で優勝した翌年、一般の生徒の野球部入部を認めなくなったことで、それを知らずに入学して行き場をなくしてしまった高校生も、横浜中央クラブの門戸を叩いた。
横田氏は、一見ややクールに見えるスマートな印象の人物だが、そのうちに秘めた情熱は熱い。広報として積極的にチーム外との交流を図る。
「なかなか日が当たらないクラブチームの活動だが、本気で野球をやるやつらが集まっている。もっと注目を集め、選手の士気も高めたい」
横田氏がチームの活動を語る熱さに、周囲の人たちもつ協力してしまいたくなる。横田氏が横浜中央クラブに合流するまではあまりチーム外との交流の場はなかったというが、今では交流の輪も広がった。横田氏が飛び込みでチーム開拓を行い、練習試合相手が格段に増え、チーム力の強化につながった。
休みの日には自宅に選手を呼び、お酒をまじえて野球談義をする。取材の日も「昨日、うちでみんなで飲みすぎましてね」と笑っていたが、実際に練習となると、熱心にノッカーとして選手に対峙し、ほんの隙間の時間でも声かけを怠らない。
荒井監督含め中心メンバーは、選手獲得・マネジメント・育成など、チーム作りすべてにおいて試行錯誤を繰り返した。高校生を預かるようになり、育成として視野に入れなければいけない幅もぐっと広がった。チーム全体でキャッチボールや打撃フォームなど基本の見直しに力を入れた。先輩が後輩を教えることで、先輩の役目をする側の自己の振り返りにもなり、チーム全体の基礎力の底上げとなった。
「自分で考える」ことで上達してきた
24歳、キャプテンの羽佐田選手は、横浜中央クラブの良さとして「いろんな人が所属しているので、その人たちから新しいことをどんどん取り入れられること」を挙げる。どうしたら上手くなれるのかを必死に考えて練習する中で、様々なバックグラウンドの野球人が集まる環境は得るものも多いという。そして「自分で考える」ことが大事だと学んだという。
羽佐田キャプテン曰く、クラブチームと高校の部活は
「全然違いますね。高校生まではやらされてたんだなと今になると思う」
もちろん一生懸命に取り組んではいた。しかし、受け身だった。今は、自分のお金で、限られた時間を無駄にできないという気持ちで、常に感謝の気持ちも持ちながら取り組む。自分の頭で足りないことを考え、練習の仕方や時間の使い方を考えて上達してきたという。
実際、横浜中央クラブの育成方針は『自分で考えること』である。自分で考えてもらうことで、身につく。間違っているなと感じることがあると「なぜ?」と聞くことから始める。実際に、練習中でも、選手同士がやり方を相談する場面が見られた。上下関係による一方的な指示ではなく、対話しながら進めるチームの姿がそこにはあった。
内野ノックの時もファーストでひときわ大きな声を出しているのが印象的だった羽佐田キャプテン。入部当時は控えだったという彼は、そのやり方でレギュラーの座をつかむためにがむしゃらに練習したという。『我武者羅』という言葉には、自ら考えるという意味を、真に含んでいる。実際、甲子園を競技人生のピークに置く球児は多い。しかし、その後も続けることによってさらにその上へと上達することはできる。横浜中央クラブの選手たちは、野球というスポーツを純粋に探求し続けていると言えるだろう。
「上のステージで勝負し 皆で泣く」
「チームは今までで一番いい状態」
と荒井監督は語る。
「目に見て分かるくらい、ギラギラしていますね。発足史上、最も良い状態です」
熱心な新人が入って、チーム内にいい競争意識が生まれ、ベテランにも「うかうかしていると試合に出られなくなる」という危機感が出て練習の雰囲気も変わったという。試合でも、選手がベンチの控えの分も背負って戦うようになり、チームとしての強さが培われた。
そう、時は満ちた。横浜中央クラブが目指すのは、クラブ選手権の全国大会への出場。
「選手に、『上のステージ』を見せたいと思っています。全国大会に行きたい。そこで、違うレベルで戦えば、勝っても負けてもみんな泣くと思う」
そして
「それそのものが何物にも代え難い経験になると思う」
と語る荒井監督。 監督として全力でぶつかり、チームもそれに応えている横浜中央クラブ。
人に、チームに、歴史あり。そして横浜中央クラブは新たな歴史に挑戦するべく動き続ける。
★横浜中央クラブ 活動データ
◼︎練習日
毎週火・木・日の夕方以降。
土日は試合になることも多い。
◼︎練習場所
横浜市の区の練習場を定期的に確保。
◼︎練習内容
- アップ
- キャッチボール
- ミニゲーム
- シートノック
- 個人練習(投球・打撃・守備)
◼︎週末の移動
試合会場は県内・県外各地に移動。
車がない選手もいるが、乗り合わせたりで調整している。
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